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初稿公開日:2017年3月22日
春色は何色でしょう
こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか?
早いもので2017年も
3月下旬となりました。
季節はもうすっかり春ですね…..。
まずは
久しぶりにスペインの春景色を
ご覧頂きましょうか。
こちらは
ラ・マンチャ地方のベルモンテ村へ
向かう途中で出会った田園風景です。
「村までもうちょっとの距離♪」と思いつつ、
両側に畑がしばらく続く一本道を
走っておりましたら、
車窓から入ってくる景色は
ご覧の通り何とも鮮やか。
刻々と変化する雲の流れや、
日干し煉瓦の廃墟を背景にして
緑の大地に咲いていたのは、
紫や深紅の花々でした。
長閑な田舎道でしたので下車し、
道端に沿って30分ほどお散歩をしてきました。
ところで…..。
写真好きの方には
こんなことはありませんか?
まだ旅の目的地手前なのに
すでに撮りたい風景に何度も出会い、
「こんな調子ではなかなか目的地に到着できない…」と、
苦笑いした経験です。
やはりその先の行程を考えてしまうと
つい時刻や光の具合が気になって、
「撮っていこうかな?いや時間のロスになるかな?」と
こんな迷いが一瞬脳裏をかすめて、
判断が難しいところですね。
持論ではありますが、
こんな場合はできる限り
撮影をする事にしてます。
なぜなら、自分の心をそのとき捉えた何かは、
もう二度と同じように撮れないものなのです。
さて今度は目的地、
ベルモンテ村の小高い丘に建つ
お城の風景をご覧下さい。
躍動的な雲に青空。
また城の周囲に広がる
原色のアマポーラの花々が
そよ風に合わせて歌っているようで、
まさに春たけなわと言う表現がぴったり。
ところで
お話は変わりますが、
中世スペインの
レコンキスタ(国土再征服運動)で
名をはせた騎士エル・シドをご存じですか?
このベルモンテ城とその周辺は
彼を描いた1961年作の同名映画、
「エル・シド」のロケ地となりました。
出演した映画俳優は
チャールトン・ヘストンと、
ソフィア・ローレンでしたでしょうか。
それともう一つの脇役、
いえいえ人ではなくて
愛嬌のある二本の木です。
映画の中でちらっと登場してます。
スクリーンでしか見た事がないのに、
丘のスロープにて
元気なその姿を見つけると
なぜか懐かしい人達と
久しぶりに会った気分になりました。
ところ変わって、日本では…..。
この季節は、
吹く風は時折冬を思わせる
冷たい日はあっても
やはり日差しはもう春。
町を歩けば、
街路樹の花咲く枝より
啼く鳥の声が聞こえてくると、
足取りも知らずの内に軽やかになります。
ところで、
すでにお話ししたように
日差しや鳥の声の他にも
色からも春を連想出来そうですよね。
もし春を
花の色でイメージするとしたら
どんな花をあなたは思い描くでしょうか?
タンポポやチューリップ、
それともパンジー…..?
中には私のように
「やっぱり春の色は桜色かな」と思われる方も
いらっしゃることでしょう。
その色は、
柔らかな水色の空に作満開の桜の色で、
うっすらと白みがかった桜色。
公園や河堤で
下のような風景を観賞出来れば、
もうこれは文句なしですね。
ところで
春のお天気は変わりやすくて、
せっかくのお花見の日が
曇天の日もあることでしょう。
この季節特有の「花曇り」と呼ばれる
どんよりとした空に、
あたかも明かりを灯すように
装飾する桜の花々。
こんな日の
空と花の色合いも
意外と素敵なのですよ。
上の花曇りの桜をご覧になって、
どのように感じられましたか…..?
さて、
この作品を撮影した思いでと言えば、
こんなことがありました。
桜の花を樹の下から眺めていて、
花の精にでも出会ったのでしょうか。
いつしか周囲の雑音が気にならなくなり、
まるで春の静寂が
自分を優しく包み込んでいたのです。
そしてその時、心の目で見えていたのは
この二つの色が相俟って
灰桜色になっていたのを覚えています。
ですから、それ以降
私にとって印象に残る春色とは
日本の伝統的な色である灰桜色なのです。
また色とは
見る人のその時の気持ち次第で、
感じ方も幾らでも変化するので
不思議なものですよね。
それでは最後の桜の花、
夜桜をお届けしましょう。
いかがでしたでしょうか?
まずは
春色の話題から始まった
季節のご挨拶でしたが、
春気分を少し味わっていただけましたか?
お話は変わって
今年初めての、また本当に
久方ぶりのブログ更新となりました。
長い間お待たせしてしまいまして
大変申し訳なく思っております。
他方、理由はともあれ
昨年は充電期間を頂いたような
一年となってしまいましたが、
その間、たくさんの新たな読者の方々が
当ブログへ訪れてくださり、
とても嬉しかったです。
どうもありがとうございました。
ところで、
当ブログのアクセス数増加に関しては
大変喜ばしくもありましたが、
その一方でずっと気になっていたことがありました。
それは現在まで未公開になっていた
バックナンバーです。
考えてみますと、
新しい読者の方々には
これまでブログの成り立ちが書かれた
初期ブログを知っていただく機会がなく、
漫然とスペインや自然風景の作品を
ご覧頂いていました。
また、以前からの読者の方からも
「過去ブログをまた読んでみたい!」といった
メッセージを頂いておりました。
そこで、
この第20回目は節目と捉え、
当ブログの成り立ちを書いた
第1話から第4話のうち
今回は第1話、2話を前編として再アップし、
この第20話ではあらすじや裏話等に、
新たな写真を加えてご紹介しようと考えました。
それではご説明はこの辺で、
早速お話を始めようかと思います。
以前からの読者の方を始め
新しい読者の方と、どちらの方々にも
楽しんで頂けたらと思っております♪
*** *** *** *** *** ***
第1話「始まりは一杯のコーヒーだった」
ブログ第1話は
イベリア半島中央に位置する
スペインの首都マドリードに居をかまえ、
現地生活にもすっかり馴染んでいた
日常から始まります。
時間が出来ればカメラを持って、
街中のあちらこちらへと
出かけていくのが楽しくて、
「興味深いものを見つけると撮影する」の
くり返しでした。
ところがある日、
こんなことが起こります。
いつものように
カメラのファインダーを覗いていたのですが、
突然、
スペインでの写真制作において
「自分が本当に表現したいテーマに沿って
撮影してきたのだろうか?」という思いが
体の中を通り抜けたかと思うと、
ヒヤッとした感覚を覚えたのでした。
そしてこの時、
「このままのやり方ではいけない…..」と、
構えていたカメラを
腕から下ろしてしまったのです。
今までのやり方の対する反省と、
同時に
焦りを強く感じた日でした。
ええ、
それ以降は真剣に
「うーん、どうしたものか…?!」と、
あれこれと悩みましたよ…。
さて第1話のお話では、
この後、未だ問題の解決策もなく心の中も釈然としない自分が
気分転換を試みようと、
お気に入りの場所の一つ、
旧市街の、とある広場にある
オープン・カフェへ訪れています。
あの日がどんな日であったかを
思い出しますと、
お散歩日和とでも申しましょうか。
木々の葉が透過光によって
よりいっそう生き生きと見える美しい日で、
お目当ての広場にも
日の光が爽やかに降り注いでいました。
その一角にある
日よけパラソルの並ぶテーブル席に
ゆったりと腰をかけて、
一杯の薫り高いコーヒーを飲んでおりますと、
気がついてみれば、
すでに気分はすっかり和らいでいました。
今度は身を少し乗り出して
テーブルに軽く頬杖をつきながら、
カフェで過ごす人々の情景を、
人生の一コマのドラマに仕立てて
眺めてみようと思ったり、
また、
今までさほど気にもとめていなかった
飴色やマホガニー色をした古びたお店の、
その粋なデザインの店構えを
興味深く見ている自分にはっと気がついて、
ようやく心の創造世界への扉が
もう一度、
大きく開かれていくのを感じたのでした。
では、なぜ新たなる写真制作への
糸口を見つけることが出来たのでしょうか?
そのきっかけは、
確かに広場での
「一杯のコーヒーから」ではありましたが、
それだけでは片付けられない
目には見えぬ力によって動かされたと感じており、
第1話では、
「たまたま上空を通過なさった神様」と
表現をしています。
さて、これより先は、
第1話を是非ご覧になって頂きたいのですが、
今振り返ってみますと、初期の頃はブログのボリュームもとても少なく、自分で読み返して懐かしいやら、また、ちょっと気恥ずかしいやら何ですよ~♪
ブログ第1話はこちら
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第2話 コーヒーでしりとり風に
第1話では、
写真のメインテーマのヒントがひらめいた場所が
サンタ・アナ広場であったと
すでにお話しいたしました。
今回はこの広場に関する裏話を
ご紹介したいと思います。
この広場については
すでにご存じでしょうから
その周辺がどんな様子なのかを
早速ご覧頂きましょう。
上の写真。
通りの名はプラド通りと言います。
この坂を奥に進めば
サンタ・アナ広場がすぐに見えてきます。
良い機会ですので、
ここでマドリードの旧市街の住宅についても
少しだけ触れておきますね。
旧市街は主に
バルコニー付きの数階建ての共同住宅が多く、
一階には店舗が並び、
最上階には屋根裏部屋になっている
住宅もあります。
今度は通りの様子をご紹介しますね。
上の通りは、プリンシペス通りです。
先ほどご覧頂いたプラド通りと隣接した通りで、
商店が一度閉まる昼下がりは
人通りが絶えますが、
それ以外はとても活気に溢れている通りです。
どちらの通りもこの広場につながっており、
このように古くから
庶民的なレストランや居酒屋、
商店が多く建ち並んでいます。
また骨董店も数件見られ、
店先のショウウインドウを覗きながら
ゆったりとしたお散歩を楽しむ人々の姿も見られます。
掘り出し物はあるのでしょうかね?
さて、ご覧になったように
この地区が賑やかと言うのは、
実は15,6世紀の頃から
巨匠と呼ばれる文豪や劇作家達が
居住していた文芸地区であったため、
昔から人々が賑やかに
集まる場所だったのですよ。
ところが…..。
ここからは時代は下がって、
現代のお話になります。
正確にはいつの頃からかは
もうはっきりと覚えておりませんが、
以前に比べて治安が
ずいぶんと悪化した時期がありました。
どんな様子だったかと申しますと
広場やその周辺では
薬物や盗難品販売が行われ、
用がなければ昼でさえ
余り近づきたくないような…..。
残念なのですが、
怪しげな場所に
なってしまったわけです。
そして月日は経過し、
確か2007年前後だったでしょうか。
頭痛の種であった治安の悪化に
流石の地元も立ち上がり、
浄化作戦や商業再計画によって
目に見えて改善されていきます。
その方策とは、
地元の人々のみならず
観光客が訪れたくなるような
場所にすることでした。
具体的になされた事とは、
まず市の警察による
地域への巡回数を増加し、
また広場には
新たに子供の遊び場を設置し
自然と親子が安心してこられるような
明るい広場にすること。
するとその努力の結果どうなったでしょうか?
ある週末の夕暮れ時に、
広場へ行ってみましたら、
子供達の遊ぶはしゃぎ声が聞こえて、
「ああ、本当に変わったんだわ…」と、
実感したものでした。
上の様子をご覧下さい。
大人達も、夜更けまで
屋外のカフェやレストランで
ゆったりと談笑しているのです!
まだまだ残された課題はあるようでしたが、
それでも浄化作戦、
功を奏したようで良かったですよね。
また徐々にではありましたが
広場に面して建っている瀟洒な劇場や、
白亜のホテルも美しくリフォームされて、
全体的におしゃれな広場に変身しました。
それから個人的にはもう一つ、
嬉しかった事があったのですよ。
それは
白亜のホテルのお隣、
タブラオ・フラメンコのお店が
見事に復活した事なのです。
せっかくですから、ここで
新しくなったこのお店の内部を
ご覧頂きながら
お話を続けていきますね。
かつてこのお店は
マドリードでも老舗の一つに
数えられていた有名なお店でした。
ご覧の通り、
レストラン内の仕切り壁も
イスラーム風で、
た非常に凝った作りになっています。
そしてこちらが
フラメンコアーティストが上る舞台で、
背面には郊外でフラメンコを楽しむ
男女を描いた絵タイルが貼られています。
実際、アーティスト達が舞台にいますと
絵タイルに描かれた人物との相乗効果で、
より賑やかな雰囲気になります。
またよく見ますと、
天井にも彫刻がなされているようですよ。
このように
出し物のフラメンコもさることながら、
入り口付近のBarカウンターや、
窓辺の内装にも気を遣っていますが、
さらには店の外装までにもこだわって、
お店全体がいかにも
スペイン南部のアンダルシア地方らしい
雰囲気を醸し出しています。
これらの鮮やかな美しい絵タイルで施された
大きな風景画は、
かつてお店のご自慢の一つでした。
ところが、
閉店のため扉には鍵がかかり、
建物も長い間放置されて
ずっと埃をかぶったまま。
その後一度、
パブか何かになりましたが、
結局のところ上手くいかなかったようです。
そして再び閉まったお店の前を
通った人の中には、
外壁の豪華な装飾に目を張り、
「このお店、何かしら?開いているのかしらねぇ…」と、
立ち止まってお店を見回し、
興味を示すものの、
いったん扉が頑丈に
斡旋されているのを認めると、
すぐさまその意味を悟って
静かに去っていく…..。
そんな姿を何度見かけた事でしょうか。
ですから、
フラメンコ愛好家にとって
今回のお店の復活については
さぞや朗報だったに違いありません。
ところで、
フラメンコに関しては
すでにご存じの方も多いと思うのですが、
抜けるような青空のもと、
目に眩しいほどの
真っ白な漆喰の家並みが続く、
南部アンダルシア地方の町や村が本場です。
ですが、石や煉瓦造りの、
どこかセピア色の似合う
マドリードらしい古い街角から、
週末の昼下がりに聞こえてくる
歌声やギターの調べ、
それに木の床をならすリズミカルな靴音も、
また違った趣があって楽しいと思いますよ…..。
それでは、
お話がだいぶ長くなりましたので、
サンタ・アナ広場での
コーヒー・カップのシーンのあらすじは
次回にお話しさせていただこうと思います。
ブログ第2話はこちら
さて、
春気分にのせたご挨拶に続き、
第1話と2話のお話についてお送りしましたが、
いかがでしたでしょうか?
今回も
ご覧頂きましてありがとうございました。
次回は「懐かしいお話はいかが?その2(第3話から)」を
お届けいたします♪
初稿公開日:2017年3月22日
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