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初稿公開日:2017年7月27日
第4話「撮りたいスペインとは何?」
一杯のコーヒーから始まった
ブログ「アラベスク文様の手帳から」は、
いよいよこの第4話で、
具体的に
スペインで取りたい対象は何なのかを
絞り込んでいく事になります。
その候補となったのは、
闘牛やフラメンコ、
またスペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼道や、建築家ガウディによる建造物…..。
それは自分にとって、
「一番スペインらしさを感じる物は何なのか」を
追求することに他なりませんでした。
さて…..。
候補に挙げたそれぞれの詳細を、
ここでさらにご説明するのも
意味がない事ですから、
いかがでしょう?
これから第4話を
まずはご覧になってみませんか?
また、この先ちょっとしたお話も
ご用意しておりますので、
お時間がある時にこちら第22話へお戻り下さいね。
お待ちしております♪
第4話はこちらから
*** *** *** *** *** ***
さて、
第22話も終盤にさしかかりました。
それでは、
これより始めましょうか。
*** *** *** *** *** ***
旅での予期せぬ出会いもまた楽し
第4話で取り上げた「撮りたいスペイン」。
そのテーマが決まると、
気持ちも新たに作品制作の旅へ
出かけていくことになりました。
スペインでの
取材の旅は楽しく、
資料や地図からでは得ることの出来ない
現地の人々との
予期せぬ出会いがありました。
そしてまた、
作品の幅をさらに豊かにしてくれたのも、
彼等からの
貴重な情報が大きかったと言っても
過言ではありません。
ところで予期せぬ出会いと言えば、
本来の旅の撮影目的とは
直接関係はないものの、
お世話になって人々の他に
たまたま通りすがりに見つけた風景も、
旅の楽しさを
倍増してくれた一つでもあったのです。
ですから、
第22話の最後には
普段のブログでは
主役として決して登場しないような風景を、
お話のラストにご紹介させていただこうと考えました。
それではどうぞ♪
マドリード・マドリード・マドリード
まずは、
ほんの少しややこしい説明になりますが、
マドリードの表記からお話を致しましょう。
スペインの
首都マドリードがある州とは、
イベリア半島のほぼ中心に位置する
三角形をした「マドリード州」です。
このマドリード州には、
県はマドリード県、
一県しか存在しません。
ですから、
仮にマドリード市まで
住所を公式に書こうとすれば、
「マドリード州マドリード県マドリード市」と、
このようになるのでしょうか。
とは言え、
例えば日本からマドリード市へ
国際郵便を送る場合でさえ
郵便番号があるおかげで、
州も県名も記載することなく
スペイン国の後は、
マドリード市○○通りxx番地で、
問題なく着いてしまいますけれどね。
つまり、
マドリード市は国の首都であって、
かつ州都、
県都でもあるわけですね。
おわかり頂けましたでしょうか?
さて、
このマドリード州を呑み込むように
東西南北に大きく広がっているのが
「カスティージャ・ラ・マンチャ州」です。
この州には有名な風車や、
歴史的建造物が多く保存されている
古都トレドを始めとして、
中世の城塞等が
広く存在していますから、
作品作りには
本当によく出かけていきました。
ラ・マンチャ地方の小村へ
あの風車に出会ったのは、
新緑の美しいある週末の午後でした。
丘に残る古城を見ようと
マドリードから北東へ90㎞離れた山間の小さな村へ
訪ねて行ったのです。
往路では
通過するダム湖を眺めながらも、
古都トレドを流れるタホ川の上流や小村、
それに古城に夢をふくらませながら
ワクワク気分でおりました。
ところが到着してみれば
すぐに村はずれで、
そのあっけなさに拍子抜け、
期待はずれの心を抱いたまま
仕方がなく村を出た私でした。
川土手に一本の田舎道が
延びているのを目にすると、
道からタホ川を眺めてみたくなり
「この先へ行ってみようかな」という
気持ちに駆られたのです。
進んでいくとその道は、
どうやら土手の草地を挟んだ右手の川に
ずっと沿うように続いているようでした。
それからまもなくのことです。
岸辺の林の中から
手頃な広さの草地を見つけると、
「あら、あそこならランチにぴったり!」と、
穏やかな傾斜の着いた土手を降りて車を停め、
テールゲートに腰掛けたのでした。
早速、街道筋のBAR(バル)で
作ってもらった軽食を取り出します。
スペインの内陸部は乾燥しているので、
しっとりとしたおむすびを
持参するのが多いのですが
その日は時間もなくボカディージョ。
では、そのボカディージョとやらをご覧下さい。
ご存じの方もいらっしゃるでしょう?
バゲットに具を挟んだ
スペイン風のサンドウィッチのことなのです。
二人分はありそうなボリュームですね。
スペイン生活も長くなってきますと、
知らぬ間にスペイン人のように
自分の好きな具を組み合わせて、
メニューには載らないアラカルトを
頼みたくなってきます。
もちろん単純にチーズまたは生ハムのみ、
それに烏賊のリングフライなどもありでしょう
さて、BARで注文した中身の具は、
鉄板焼きのポークの肩ロース肉が2~3枚と
山羊のチーズでしたが、
「パンの内側両面には
完熟トマトをたっぷり擦りつけ、
オリーブ油もかけてください値♪」と頼みました。
こうすると
外側が堅いスペインのバゲットも、
時間の経過と共に程よくしっとり。
また味に奥行きも出るのですよ…..。
午睡は牧羊道の木陰で
ところで…..。
食事中に腰掛けた場所からは
週末らしくゼッケンをつけた子供達が、
すーっ、すーっとカヌーで軽やかに川下りする姿が、
木々の幹の間から見え隠れしていました。
こんなのどかな光景を眺め、
食後となれば快適な気温の上に、
程よい暗さの木陰もある。
そして聞こえてくる愛らしい小鳥の声。
ああ、なんて良い気持ちなのでしょう!
食後に車の座席に戻っていた私は、
案じていた通り睡魔には勝てず、
やはりうとうと。
眠り始めてから
10分、いや15分程度経過した頃でしょうか。
岸辺に茂る木々の下で、
羊の群れに出会ったのはこの時でした。
つい今し方まで川風に乗ってきた
子供達の明るい声に代わって
聞こえてきたのは、
「カラン、カラン、カラン…カラ」と、
素朴で金属的なベルの響き。
夢の中での出来事なのかと
頭の中でその判断を思い迷いつつも、
いよいよベルの音が大きくなり
確実に現実のものだと悟った瞬間、
はっと目が覚め
車のバックミラーを覗けば、
そこには背後から近づいてくる
羊の群れがありました。
その時の眺めは、
それはとても印象的なものでした。
束の間の午睡を楽しんだ岸辺の木の葉は、
翡翠色のタホ川を背に
午後の斜光で光り輝き、
目の前を僅かに土埃を立ち上げながら
羊の群れが草を食べつつ
ただ、ただ、蹄の音を立てて移動していく姿。
その情景とは
今も昔も変わらぬ時を超えた
「一枚の絵」のようだったのです。
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今回も最後までご覧下さいまして
ありがとうございました。
2話を通してご紹介した
ブログの成り立ちでしたが、
いかがでしたでしょうか。
第1話から第4話まで
私自身も加筆訂正をしながら
何度か読み返し、
懐かしさもひとしおでした。
さて最後の第4話では、
夏の巡礼路への旅をビバルディの「四季」から
夏の詩の一編をご紹介したのですが、
思い出したようにブログに合わせて
ビバルディを聴きながら、
「日本の夏もより年々酷暑に
なっていくなぁ」と感じました。
どうぞ読者の皆様もご自愛下さい。
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