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初稿公開日:2015年11月29日
野鳥から届いた小さな秋の贈り物
秋もいよいよ終わりに近づき
朝晩だいぶ冷え込むようになりましたが、
如何お過ごしでしょうか。
今年は寒暖不順で
紅葉が遅れているようですので、
まずは昨年の晩秋の作品
「門前の秋景色」をご覧頂こうと思います。
ところで、
晴天の日が続いた10月下旬のある朝、
思いもよらず
小さな秋の贈り物が届きました。
届け主は野鳥のようですが、
ご覧の通り
家のバルコニーに木の実が三粒。
見つけた途端ちょっと嬉しくなって、
今回当ブログでお知らせした次第です。
こちら、
何の植物の種なのか
ご存じありませんか。
こうして鳥から届いた実を、
手のひらに載せて眺めているうちに
何の種なのか探してみたくなって
公園や里山へ行って参りました。
秋日和と感じられる日に歩くと、
とても気持ちがよいですね。
残念ながら届け物と同じ種を
見つけられませんでしたが、
こうして出来上がった
写真作品にお話を添えて
今回展示する事が出来ました。
さて、その展示場所ですが
覚えていらっしゃるでしょうか。
第12話で登場した
あの「光の野外美術館」にしました。
作品には秋景色の他にも、
植物や昆虫も登場します。
よろしかったらまた
美術館へお越しになりませんか。
光の野外美術館とその展示作品
それでは
館内へお入りになる前に、
第12話「光の野外美術館」について
当時撮影した
別の作品を今回ご覧頂きながら、
簡単に説明しようと思います。
まずこの野外美術館は、
読者であるあなたご自身が
あたかも自然の中をお散歩しながら、
写真作品を鑑賞する美術館です。
また第12話のお話の内容は、
「1,2月の風景は
一見殺風景に思えるけれども、
独特の光は柔らかで、
またとても美しいものである。
この光を十二分に活用して
色彩溢れる世界を表現する」
といったものでした。
中でも
「特に華やかな花を登場させずに
この季節の光の美しさを味わう」。
これも一つの試みでした。
さぁ、
程よくご説明も終わったところで、
光の野外美術館開館の時間となりました。
入り口の扉は、
ちょうどあなたの目の前です。
それからもう一つ、
館内ではご案内役として
お話をさせて頂こうと思っています。
ではどうぞ
ごゆっくりお楽しみ下さいね♪
美術館入り口付近で 花壇に咲く花
この花の名はクレオメ。
この他にも
蜘蛛に見立てた名前
「スパイダー・フラワー」や、
「西洋風蝶草」(せいようふうちょうそう)、
「酔蝶花」(すいちょうか)と言った
蝶の字が入った
別名がつけられています。
また花弁や、
その間から飛び出す
長い雄しべの形から、
例えば涼しげで華やかな
「夏の花火」のようにも見えませんか。
このようにクレオメの花は
人々に色々な姿を想像をさせる
魅力的な花だと言えますね。
また花言葉は、
夕方になってから咲き始めるので
「秘密のひととき」。
けれども、
この花言葉から
日の光が苦手なのかと思えば、
クレオメ自体は
適度に日が当たる場所が好き。
当美術館では、
黄色やオレンジのマリーゴールドと共に、
円形花壇の中央で日を浴びながら
優雅な姿で咲いています。
それでは次の順路、
背後に伸びる一本の小道へ
どうぞお進み下さい。
道端に咲く花
この小道を歩きながら、
道端にも目を向けてみませんか。
そこには「イヌタデ」、
別名「アカマンマ」が咲いていますよ。
アカマンマを前に、
子供の頃のようにしゃがんで見ていると、
懐かしいおままごとの情景が
浮かんでくるかもしれません。
あの頃、この花を「お赤飯」に見立てて
一体どんなおしゃまな会話をしていたのやら。
またアカマンマは
決して目立つ花とは言えませんが、
その分布範囲は
北方領土から沖縄までと広く、
元気いっぱい。
そして
この小さな桃色をした粒々。
花弁のような、実のような……。
いえいえ、これは萼(がく)でしたよね。
開花時期は6月から10月までですが、
10月も後半になると、葉の一枚一枚も
紅葉の色見本のように変化し、
萼の色と調和してそれはまた見事。
ご覧のアカマンマは、
ちょうど光がまわった状態で、
美しい日本的な色合いとなっています。
並木道の風景
さて...。
今、歩かれている小道ですが、
実は桜の並木道になっています。
頭上をご覧頂けますか。
桜の木を仰いでみると、
葉は虫に食べられ穴は開き、
また風に呼ばれて
時折一枚、もう一枚と
旅立っていくので、
枝の様子も寂しくなるばかり。
でもご心配は無用です。
桜の木は来春にむけて
花芽(はなめ)の準備は怠っていませんから。
思えば半年前。
桜の木は私達人間にも
花を楽しませてくれましたが、
あの満開の風景はすでに遠く、
心の中ではほんの淡い思い出に….。
「時の流れ」をつくづく感じますね。
落葉広葉樹「スズランの木」
歩いている
この並木道は短くて、
まもなく視界がぱっと開けると、
前方の広場の一角に
「スズランの木」が見えてきます。
この木が他より
群を抜いて目を引くのは、
透過光によって、
まだ夏の緑色や
燃えるように紅く染まり始めた葉が、
溢れんばかりの光を
周囲に放っているからなのです。
またその明るく輝いている
スズランの木の下で、
腕のように気持ちよく伸びた枝には
可憐な山杜鵑草(ヤマホトトギス)の花が、
蕾をつけています。
虫媒花であるこの花は、
お洒落にも気を遣います。
鳥のホトトギスの
胸からお腹までの柄に似せて、
「白地に紫色の斑模様」なのも
虫を引き寄せるためなのですね。
では、
里山の花であるヤマホトトギスを
ご覧になったところで、
そろそろ次の場所へ
移動して頂きましょうか。
*** *** *** *** *** *** ***
花壇や並木道の花は
いかがでしたでしょうか。
当美術館は展示室を移動する毎に
次のご案内をさせて頂きます。
この先、引き続きご覧になる方、
また一旦時間を置いてからご覧になる方、
どちらの方も目安として
このような案内板をお役立て下さい。
これから先は
谷戸(やと)の風景が始まります。
森の斜面近くで見られる植物や昆虫、
また柵の杭の風景をお楽しみ下さいね。
*** *** *** *** *** *** ***
谷戸で見かける花々
木漏れ日が
諸処に深く差し込む森。
その中を丸太で抑えただけの
山道の階段を数分で下りていくと、
目の前の平地には
水田や湿原地帯、
またその近くには小川が流れると言った
緑の谷戸の風景が広がっています。
緑の平地と
森の斜面の境には
小道が延びています。
この辺りは少し薄暗く、
また落ち葉の上を歩くと
靴底が沈んで
じめっとするような場所ですから
お足下に気をつけながら歩いてくださいね。
最初の植物は
木の柵から出たり入ったりと、
のびのびと咲く
水引草(ミズヒキソウ)です。
ミズヒキと
隣り合わせに群生しているのが
溝蕎麦(ミゾソバ)。
読んで字の如く、
溝や小川の縁に生える蕎麦に似た花です。
ところで
誰が命名したのでしょうね。
木の葉の形が「牛の額」だなんて。
それを知った後で再度眺めれば、
「牛の額に花かんざし」の題名が
浮かんできました。
続いてこちらは
日本固有種のタイアザミの花。
赤紫色をしたアザミの花のもとへは
蜜を吸いに
頻繁に蝶や蛾が訪れています。
もう一つのタイアザミは、
一足早く受粉のお手伝いをした
昆虫のお陰で、
綿毛のついた実となって
旅立とうとしています。
しかし虫には優しくとも、
棘(トゲ)を持っているので
いざ掴もうとする者にとっては
アザミは厄介な植物です。
もっと厄介と言えば
洋種山牛蒡
(ヨウシュヤマゴボウ)で、
こちらは北アメリカ原産で、
草丈が2メートルにもなります。
もちろん木の柵の向こう側に
生えているのですが、
もしこの植物に出会ったら
あなたもその姿に
「ただならぬ妖気」を
感じるかもしれませんよね。
それもそのはずでご覧の通り、
蛍光塗料を思わせる緑や赤紫色の葉、
そして葡萄の房のような実や
牛蒡に似た根まで毒があります。
どうぞご注意なさって下さいね。
特設展示室「木の杭」
さて
柵のついた小道を歩きながら
幾つかの花々をご覧頂きましたが、
実はこの柵にも
作品が展示されています。
構成している木の杭は
小さな特設展示室となっていますから、
まだの方は
覗かれると意外と面白い世界ですよ。
杭の上の光景は、
ミニチュアの世界そのもの。
またその他にも
偶然目の前の森から
風に吹かれて舞い降ちた
植物もみられます。
例えば、こんな風にです……。
「ぽとん!ころころ」。
枝から上手い具合に
落ちた木の実は、
小さな秋の風景の一コマ。
ところで
小さな秋の余韻に浸る暇もなく
申し訳ないのですが、
急いで隣の杭を見て頂けますか。
実は「よいしょ、よいしょ」と、
呑気に崖っぷちを歩いている
カマキリがいます。
あなたと目が合ったのは、
段差のある低い手すりへと
移動中のハバヒロカマキリ。
「何かご用でも?」と、
言わんばかりの顔でしょ。
カマキリはどうも苦手という方でも、
もしかしてこのハラビロカマキリに出会ったら
アンテナ付きロボットのような顔つきに
たじろぐことなくつい、
「いやぁ、どうも!」と盆の窪に手を当てながら
挨拶してしまいそうですね……。
さて特設展示室では
あと二つほど作品が展示されています。
こちらは萎れた臭木(クサギ)の果実。
花は白く可憐で、
何とも言えない良い香りがしますが、
それとは逆に葉が臭うばかりに
ついた名が臭木(クサギ)。
ちょと気の毒だと思いつつも、
やはりこのように命名されるほど
臭いは強烈なのでしょう。
締めくくりは、
コブシの実と朴葉です。
今までご覧頂いた木の杭の情景は
一切手を加えず自然の状態を
撮影したものですが、
こちらのコブシの実と葉だけは
足下から自分で拾い上げ、
最後の作品として相応しいように
杭の上に飾り付けをしたものです。
コブシは、
春にモクレンに似た
真っ白な品の良い花を咲かせますが、
しかし実の形状を見ると、
この花のイメージとはかけ離れ、
まさに「あの花が?」と疑うほど
独特の形になります。
更に大地に落ちた
実を眺めていますと、
それはまるで
ケーキ用の真っ赤なドレンチェリーと、
チョコナッツの組み合わせ。
そんな風にも見えてしまいますけれど……。
美味しそうなお話をしていましたら、
虫も寄ってきてしまいましたね。
*** *** *** *** *** *** ***
里山の小道を歩きながら
作品鑑賞は楽しんで
頂けましたでしょうか。
この先、
池までは短い距離ですが、
その間に出会う植物や
昆虫をご覧下さい。
*** *** *** *** *** *** ***
池へと通じる道で
順路に従がって小道を途中で外れ、
湿原地帯を通過して
池の畔へ向かいます。
また撮影した日の事でしたが、
途中の湿原地帯で
子供達に出会いました。
ここの湿原地帯は恰好の遊び場で、
その日、彼らを少し遠巻きに
眺めていたところ、
どうやらお目当ては
ザリガニだったようです。
友達同士で身近にある葦を、
簡単な釣り具として
工夫しながら楽しんでいました。
そんな彼等の姿を
懐かしい眼差しで眺めていたものの
ふと顧みれば大人も
やっていることは同じ。
他でもなく私自身にとっても、
「自然が作品に対する発想の
お手伝い」には変わりはありません。
人との交流により得るものも非常に大切ですが、
自然に対して何よりも
素直な心で向き合える事がよいですね…..。
今度は歩いてきた
湿原地帯から池へ向かう道で、
ススキの穂が目に入ってきました。
でも、この穂の形を見ると
少し不自然ではありませんか。
一部が直角に曲がり、
日の光の中できらきらと言うよりも、
ぴかぴかと妙な輝きをしているのです。
その原因が何かと言えば、
産卵期の女郎蜘蛛(ジョロウグモ)が
張った糸にありました。
それはもう、いたる場所で。
ススキが生える場所には、
当然のごとく
外来種のセイタカアワダチソウも
生えていますが、
その多くが糸でぐるぐるに
巻き付いてしまっています。
そして
このセイタカアワダチソウに
潜んでいるのがオオカマキリ。
しかし、
このオオカマキリは
ここにいて大丈夫なのでしょうか。
例の蜘蛛の糸に触れ、
その振動を感づかれたら、
「産卵期の雌同士の決闘」になりかねません。
言うまでもなく
一触即発の世界で生きている例ですね。
カルガモと木の実
ここで気分を変えて
次のようなお話はいかがでしょう。
足下の大地は今、
木の実も混ざって秋模様そのものですが…..。
今年の春、
この池の畔にある道で
カルガモに出会いました。
春になっても、
まだまだ道端には
昨秋のどんぐりは残っており、
よく食べる姿を見かけました。
水中の食べ物だけでなく
木の実も好きな雑食のカルガモ。
先端が丸い形のくちばしで
上手く割って食べます。
また、カルガモの食事の最中に
気の毒だと思ったのですが、
近寄って「写真を撮らせてね」と、
声をかけますと時々食べるのを止めて、
「こんな風で良いのかしら?」とポーズまでとり、
何枚かのポートレートを撮らせてくれました。
撮影が終了し、
「どうもありがとう♪」とお礼を言うと、
了解したように池へ戻っていきましたが、
この秋、水辺で
彼等をまだ見かけませんが
一体何処にいるのでしょうか。
*** *** *** *** *** *** ***
光の野外美術館には
幾つかの池がありますが、
特に美しい水辺の風景が
見られるのがこの池です。
まずは主に
ウッド・デッキが設置された
周辺の植物をお楽しみ下さい。
*** *** *** *** *** *** ***
池の畔にて
最後の展示室である
池の畔に到着しましたね。
早速ですが、デッキの端に
並んで茂っている木々が見えますね。
あそこには蔓を巻いた
カラスウリの実がなっていますが、
近づいてみてみませんか。
ご覧になれますか。
ぶら下がっている
朱色の熟した実と、
縞模様のウリボウと言われる
未熟な実が一つずつです。
まさに秋の風情ですね。
それから、
ここではその他にも
蔓性植物が幾つか見られますよ。
こちらは
枝豆ではありません。
すでにご紹介したヤブマメの実、です♪
じっくり観察すればするほど
蔓の先は右へと静かに延びて、
やがては作品の枠外へ
飛び出していきそうな
植物の力を感じますね。
もう一つ、
こちらはヤマノイモによく似た
オニドコロ(鬼野老)。
一見ヤマノイモにも見えますが、
大きさもより小ぶりで、葉の様子や付き方、
蔓の巻き方なども異なります。
蔓性植物は枯れると
他の草木に
バネのように巻き付いていた蔓や、
また葉もカリカリになって、
気の毒な姿をになりますが、
このオニドコロの果実は冬場になると、
とてもエレガントに変身します。
では、その姿をどうぞ♪
ご覧になっている方が女性なら、
「綺麗ね。花のコサージュのようだわ」と、
的確なる表現が返ってくることでしょう。
その美しさの秘密は
この「さく果」と呼ばれる果実にあります。
花の形に見えるのは
種子が入っているカプセル。
乾燥すると上に向かって
こうして弾けるのですね。
枯れた植物を観る
オニドコロの他にも、
枯れた植物を見ることが出来ます。
普段は季節の彩りも美しいお花を
楽しまれると思いますが、
折角ですからこの機会に
枯れた植物の姿も
少しご覧になってみませんか。
「おーい! まだここにいるよ、ここ!」
葦の葉にぶら下がる一枚の枯葉が、
そう囁いているように見えます。
蜘蛛の糸や
他の植物に引っかかり、
舞って落ち葉になれぬのか、
一陣の風が吹いても
そこで風に揺られてひらひら、
そしてまたひら・ひら...。
デッキ横のエゴの木。
野ブドウの実のように
色が変化するのでしょうか。
実はすでに乾燥していて、
その大きさは6、7ミリほど。
その実の中にある種子は
ヤマガラ(山雀)の大好物。
でも食べ損なった実は
まだいくつも枝に残っている様子です。
葉が枯れ、
実を結んでいるこの植物の名前は、
ワルナスビ(悪茄子)。
実が熟すとチェリートマトのようになるけれど、
このかわいさに決して騙されてはいけません。
では、一体どんな奴なのでしょう。
アメリカ南東部原産のワルナスビは
葉や茎は茨のような棘で武装はするし、
どんどん張る地下茎では数を増やしていく。
また薬剤で退治しにくい強い生命力、
おまけに植物全体が有毒。
その悪さゆえ、
英名でつけられた名前は
「ソドムの林檎」、そして「悪魔のトマト」。
悪漢は本当にどんな世界でも存在するのですねぇ。
枯れた楓の葉に
「冬枯れ」と言う題名を
あえてつけなかったのは、
「冬の寒さ」や「風景の寂しさ」よりも、
むしろ楓の葉を人間に例え、
過酷な世の中にもめげずに立ち向う、
言わば「挑む」姿にも見えるからでした。
じっと眺めていますと、
勇気さえ湧いてくるから不思議です。
ご覧になっているあなたでしたら
どのような見方をされるのでしょうか...。
湧き水の風景
さてもう一カ所、
水上の舞台横で見つけた
湧き水をご案内致しましょう。
湧き水近くの草には
アカスジキンカメムシの幼虫がいたり、
また水中を覗かれると
秋の賑わいを感じる事が出来ますよ。
この湧き水には
童謡「どんぐりころころ」に登場する
泥鰌はいませんが、
スイスイと水上を歩く
アメンボが丸い波紋を作っています。
ところで...。
晩秋の林や並木道は
吹く風に黄葉が一気に舞い落ちて、
うっとりする絵画的な光景が見られます。
けれども、ことどんぐりの実がなるこの場所では、
可笑しいことに
風と共にバラバラッと落下する際に、
どんぐりが頭を直撃するんですね。
そして、
水に飛び込むどんぐりはもっと音楽的で、
「ぼちゃ、ぼちゃん、ぼちゃんー♪」と立て続けに、
それもリズミカルに音を立ててその賑やかなこと。
その落下速度ですか?うーん、そうですね・・・。
音楽のテンポでしたら”Allegro Vivace”
(アレグロ・ビバーチェ)と、かなり早い速度です。
また
水中のどんぐりの数ですが、
もう満員御礼の状態ですから
歌詞のようにどんぐりが
「泣いて、困らせる」はなさそうなので、
遊び相手のアメンボも一安心のはず。
*** *** *** *** *** ***
デッキを一回りした後は、
当美術館の最後の展示室となる
水辺の風景をご覧頂きます。
一方、
快適だった館内のお散歩も
急に雨模様のお天気に
変わっていきますが、
そこには晴天の日とはまた異なった
美しい景色が目前に広がっていきます。
それでは、池の眺めを
たっぷりとお楽しみ下さい。
*** *** *** *** *** ***
水辺の風景
赤とんぼのとまる
デッキの縁に立っています。
覗き込んでいる場所には
藻と落ち葉が二枚。
川の源流であるこの池は
ゆったりとした水の流れがあって、
水に浮かぶ二枚の落ち葉は、
つかず離れずを繰り返すかと思えば
また遠ざかる…..と、
その動きは勝手気まま。
水の流れに
池の上を通過する雲が姿を現すと、
その流れはご覧のような作画、
それも「自然にお任せ」を
描いてくれるのです。
秋の雨
おや?
お話の途中ですみませんが、
空をご覧下さい。
どうやら風が出てきて
雲行きが怪しくなってきましたね。
見れば黒い雲が、
急ぎ足で
流れるように向かってきます。
池の様子も
光の変化に伴い、
藻の緑に天空の色が重なり
藤色に変化していきます。
また、
水面に鮮やかに映していた
紅葉の色もすでに淡く、
その姿も頼りなげ。
空の色からこれはもう、
待ったなしで降ってくるでしょうね。
野外美術館の良さは
自然の中で作品を鑑賞出来る事ですが、
その一方で、弱点は雨です。
でもご安心下さい。
本日は傘を持ってきていますから。
水辺から小魚の群れは隠れ、
いつしか鳥の鳴き声も消えて
辺りはとても静かです。
木陰になっているこの池の淵では、
水鏡に映し出された葦や森の草木の姿と、
水面に浮かぶ藻や落ち葉がない交ぜとなって、
思いもよらぬ深みのある
情景になっています。
またこの光景も、
光の加減により
次々に変化していく事でしょう。
ぽちゃん。ぽちゃん、!!!
聞こえてきましたか、雨の音が。
この降り出した雨の中を、
傘をさしたご夫婦が
こちらへ向かってきます。
今日も毎日の日課で
歩いていたのかもしれませんね。
池のデッキに立つお二人。
眺めて一呼吸した後、
「ああ、美しいねぇ。モネの絵のようだ」と、
ぽつんと呟くご主人。
確かにその通りです。
雨の池も素敵だと思われたのでしょう。
こちらのご夫婦も
もう少し優しい雨でしたら
幻想的な池の光景を
もうしばらく味わっていたでしょうに。
ところでこの雨、
残念ですが
止みそうにありませんね。
入口まで戻った方が良さそうです。
やれやれ…..。
入り口に到着しましたね。
でも、最後に雨となりましたが、
不便さは兎も角も
意外にも普段と違った池の佇まいを
楽しんで頂けたかもしれません。
それからこちらへ戻る時、
池で見かけた葉っぱですが、
雨脚がだいぶ強くなっていたので
途方に暮れた様子でした…..。
本日ラストの写真
さて今回、
当美術館を一巡りして頂きました。
またお散歩は楽しまれましたか。
ところで、案内役として
心の残りが一つあります。
それは晴れた日の池です。
お天気がよければ、
水中で模様を描く藻には
日中の暖かな日の光が当たり、
またその間を縫うように
小魚の黒い群れが泳ぎ、
奥の蘆間から
小魚を狙う翡翠(カワセミ)の姿に
出会えたかもしれません。
しかし池の水藻も、
そろそろ姿を消し、
また池の水も澄み渡った
冬の色に変わる事でしょう…..。
それでは、これをもって
本日の光の野外美術館は
閉館となります。
最後までお付き合い頂きまして
誠にありがとうございました。
またのご来館をお待ちしております♪
*** *** *** *** *** ***
ブログ後記
今回の野外美術館「秋」の
簡単な解説になりますが、
全体的に悠々とした「時の流れ」を
意識したお話になっています。
具体的には、
展示する作品は旬の花や
実りの秋らしく果実だけではなく、
花が開花し、結実した後の
未だ残る植物の姿、
加えて枯れた別の美しさも
同時に味わって頂こうと考えました。
また最後の展示室では、
様々な水辺の風景が登場しましたが、
こういった幻想的な作品も含めまして
日頃の写真作品は、
レタッチ(カメラやレンズ、画像に付着したゴミ等
見苦しいものを除去する事)する以外は
基本的には「ストレートフォト」です。
なお、毎回お届けする
ブログ内容に関してですが、
スペイン・シリーズは
ある程度連続してUPが望ましいと考えますが、
その一方で、他の写真作品は
スペインのお話の切れのよい場所に
数枚程度しかご覧いただけないため、
今回のように時々美しい日本の季節の話題を
ご紹介させて頂くのも良いかな….と考えています。
どうぞあらかじめご了承下さい♪
今年もあと残すこと
一月余りとなりました。
次回ブログは来年の予定です。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
初稿公開日:2015年11月29日
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