第15話 道(IV) マクロ・レンズで見るマドリード  ―シベーレス広場を中心に―

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季節を演出するもの

春の到来が待ち遠しく、また梅の花が香しい季節となりました。

白梅とほおじろ 8265

白梅とメジロ 8265

寒さはまだ続きますが、お天気の良い日中の光りは澄んで美しく、とても清々しい気持ちになります。

梅の花 8628

白梅 8628

随分と長い間ご無沙汰をしておりますが、お変わりございませんでしたか。

あれから季節は秋から冬へ、そして今では少しずつですが春の足音も聞こえて来ました。

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冬の終わり (道に散らばる椿の花) 8276

ところで、移りゆく季節の風景で印象に残ったものを秋から順に幾つか振り返ってみました。

中でも去年の12月初旬だったでしょうか。

野葡萄 12609

野葡萄 12609

家の近くで鈴生りになった野葡萄の実は、

野葡萄 12612

野葡萄 12612

まるで変わり玉のような美しさでした。

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紅葉 8527

それから山々や公園の頭上を覆った色鮮やかな楓や、

楓の葉 12750

雨上がりの楓 12750

また銀杏、クヌギなどの落葉樹の葉は、

落ち葉 7247

落ち葉 7247

本格的な冬を迎えると道に敷かれた枯れ葉模様の絨毯となって、

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冬の落ち葉 13998

道行く人にそっと「季節の移ろい」を伝えてくれました。

キジバト  8132

キジバト  8132

過ぎ去った季節は、肩越しに振り返ればすぐ後ろにあっても

雪道  8146

雪道  8146

何故かその風景の記憶は意外にも遠くに行ってしまうものです。

紅梅 8332

紅梅 8332

季節の光り

さて、季節を演出してくれる中に光りの変化がありますが、

午後の光  12681

午後の光  12681

カーテン越しに差し込む午後3時過ぎの光りを眺めておりましたら、

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水面 7552

ついこの間までオレンジ色に放っていた女性的な光りと比べると今は随分と日差しも長く、

木の葉 7200

木の葉 7200

明るくきらきらと輝き始めて来たようですよ。

マドリードの冬

マドリード 冬の朝 1018

マドリード 冬の朝 1018

ここのところ、季節の移ろいを感じていましたら、ふと

『今頃、あの町はどんな様子かしら...』と、

マドリードの冬を思い出しました。

マドリード 冬の公園 15482

マドリード 冬の公園 15482

マドリードでは四季の中でちょっとせっかちな季節なのが、秋と言えるかもしれません。

マドリード 冬の市場 15481

マドリード 冬の市場 15481

秋は、夏から受け取った季節のバトンを何もあわてることはないのに「なるべく早く渡さなきゃ!」と、割合と急ぎ足で冬へ渡してしまうのです。

マドリード 冬の散歩 15479

マドリード 冬の散歩 15479

この律儀な秋からバトンを渡された冬のマドリード。

中央山系(セゴビア側より) 15518

中央山系(セゴビア側より) 15518

町の北方に横たわる中央山系「グアダラマ山脈」は雪化粧が施されても、市内の積雪は意外と少なく、乾いた寒さになります...。

マドリード中心街の赤茶の瓦屋根と煙突(中央) 13840

マドリード 中心街の瓦屋根と煙突 13840

マドリードの街。その思い出深い冬景色とは、ビルの屋上や、共同住宅から昇るボイラーの煙でした。

「冬空に昇る煙に茶色の屋根瓦」の組み合わせ。これは今も冬の風物詩となっている事でしょう。

マドリード 冬 4666

マドリード 冬 4666

西から東へ拡張されていった旧市街

それでは季節のご挨拶の中で折良くマドリードの話題が出ましたので、この辺で前回のお話をさらりとしながら、その先を進めていこうと思います。

どうぞごゆっくりお楽しみ下さいね。

14432

マドリード 中央郵便局のポスト 14432

「マドリードの町がどのように発展していったか...」

古い時代の絵地図を順に追っていくと、19世紀半ばに行われた拡張計画以前は、町の西端、つまり現在の王宮辺りから東側へと放射状に発展しているのがわかります。

Duque de Nagera通り L7630295

マドリード旧市庁舎の扉 :  扉に見えるマドリード市の紋章は、 中世に起源を持つ。王冠に、熊とイチゴノキ 9603

また小ぶりな町であったマドリードが大きく変化を遂げたのは1561年、

フェリーペ2世によって宮廷がマドリードへ移され、実質上スペイン帝国の首都となった時からでした。

マドリードの古い広場 「ビジャ広場」

かつてのマドリード市庁舎: 現在は分室になっている(ビジャ広場) L7630208

ビジャ広場の眺め : (右)”Casa de la Villa”「マドリード旧市庁舎」。(正面奥)16世紀前半の装飾が技巧的なスペイン・プラテレスク様式「シスネロスの家」。9593

ここはマドリードのセントロ地区。王宮から程近い旧市街にある「ビジャ広場」。

上の写真右手旗が掲揚された薔薇色の建物は、17世紀末からつい2008年まで「マドリード市庁舎」でした。

9633

マジョール広場の門からの眺め 9633

近くには、観光名所である有名な「マジョール広場」や、

サン・ミゲル市場 9591

サン・ミゲル市場 9591

お洒落なタパスがつまめる市場に居酒屋、商店も立ち並び、特に週末や休日には活気溢れる場所ですが、

まだ市庁舎であった頃、ビジャ広場に足を踏み入れますと歴史の重みゆえか、或いは広場を囲む狭い小道が、周囲の音を遮断するせいなのか

マドリード通り 9600

マドリード通り 9600

不思議と都会の喧噪がさほど感じられない広場でした。

それでは、これから何世紀も市庁舎が置かれていたこの広場を少し見て回りましょうか。

「スペイン海軍の父」の立像

まずは、彫像の背後の建物をご覧下さい。こちらは、16世紀の枢機卿の甥の館、「シスネロスの家」。ポーチの造りや窓の装飾から見ても家というよりもむしろ宮殿です。

スペイン海軍の父・アルバロ・デ・バサンの彫像 : 16世紀、レパントの海戦を始め数々の海戦で活躍した海軍提督。また「英西戦争」が起こる前にイングランドがスペインに驚異を与えることを提唱した人である。 9597

シスネロスの家とアルバロ・デ・バサンの像 9597

そして中央花壇に立つこの彫像の人物もちょっと気になりませんか。少しご説明を致しますね。

こちらは、先程お話ししたフェリーペ2世がちょうどマドリードへ宮廷を移す前後、16世紀に活躍したサンタ・クルス侯アルバロ・デ・バサンです。

サンタ・クルス侯アルバロ・デ・バサン 立像  9597C

サンタ・クルス侯アルバロ・デ・バサン 立像  9597C

サンタ・クルス侯と言えば、スペインとヴェネチアの連合艦隊がトルコの地中海支配を打破した「レパントの海戦」や数々の海戦で軍功を挙げた軍人でした。

波しぶき  4365

波しぶき  4365

サンタ・クルス侯は時代の趨勢を見極めた人だったようで、

14837

ポルトガル・リスボンの瓦屋根 14837

この時代、増大していくイングランドの驚異を察し、n時の王、フェリーペ2世に「スペイン無敵艦隊」の構想を進言し、自ら海軍総司令官となり指揮を執るのですが

帆綱  15508

帆綱  15508

心労が重なり高齢のせいもあり、志半ばでポルトガル・リスボンで急死してしまいます。

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ポルトガル・リスボンの町とテージョ川 14824

リスボンからの訃報を受けた王は、「サンタ・クルス候の他に海戦を熟知した者はいない」と、非常に落胆し、スペインにとって大きな痛手となったと言われています。

14841

リスボンで行われた航空ショウ 14841

そして彼の死後。n海賊(私掠船船長)上がりであるフランシス・ドレイク等が率いるイングランド海軍との「アルマダの海戦」でスペイン無敵艦隊は壊滅状態に...。

港の風景 15502

港の風景 15502

海軍提督アルバロ・デ・バサン。現在、「スペイン海軍の父」と呼ばれる彼の名を艦名にしたスペイン海軍のフリゲートが就役中です。

ビジャ広場の古い住居

さて、無敵艦隊の余韻も冷めやらずですが、お話を戻して広場でもう1箇所、中世マドリードを偲ばせる「ルハーネスの塔と家」をご覧下さいね。

ルハーネスの塔 : ムデハル様式、15世紀初頭と言われる。 897

ルハーネスの塔 : ムデハル様式、15世紀初頭と言われる。 897

この塔と並びの家は15世紀に建築された町の権力者一族の住居ですが、ご案内したのは2つ理由があります。

1つはマドリードでも最も古い「住居」であること。もう1つは、イスラーム芸術とキリスト教建築が融合したムデハル様式の館であることです。

ルハーネスの塔。馬蹄形アーチの扉。 9595

ルハーネスの塔にある馬蹄形アーチの扉。 9595

この塔には広場から見て向かって左手、狭いコード通りに入るとすぐにルハーネス家の扉があります。

ここに立っていますと、扉を開錠する当時の家屋敷の者が、内側から突然大きな音を立てて今にも出てきそうな気がしませんか。

9599

ルハーネスの家 : 15世紀末頃のマドリードで最も古い館。エンリケ4世の侍従ペドロ・デ・ルハンが購入した。9599

以上15,6世紀の建築物をご覧になって頂きましたが、

その他の旧市街の大部分はやはり国家を司る中心となった17,8世紀以降のものが殆どであって、

"Iglecia del Scramento"1615年建立のシトー会の修道院の 寺院は、現在、軍属司祭の「サクラメント教会」となっている。 12809

Iglecia del Scramento (サクラメント教会): 1615年建立のシトー会の修道院の寺院は、現在軍属司祭の教会 12809

マドリードの始まりを知ろうするのであれば、この古い地区の散策だけでは不十分。

カメラで例えるとしたら、被写体に近寄って「マクロ・レンズ」で物体の一部分だけを接写して全体を見ていない事になるからです。

マドリードを異なる視点で眺めてみる...

さて...。前回第14話ではマドリードの町を知る過程で「木も見て森も見る」と、マクロ・レンズから視点を変えて町の全景を眺めてみましたが、覚えていらっしゃいますか。

14941

マドリード全景 14941

公園から望遠レンズで覗いたマドリードは、標高が高く、見晴らしの良い町であり、

町の始まりは9世紀半ば、イスラーム教徒がここの地形を利用して敵を監視する塔を建設した時である事に改めて納得したのでした。

中世イスラーム時代の監視塔(ATALAYA) SORIA 13579

監視塔  ソリア県 13579

しかしこの監視塔や、その後防衛力強化の為に建設された当時のアルカサール(要塞)はマドリードにはもう残っておりません。

13647

ラ・マンチャ州の古城 13647

ところが、マドリードを中心とするスペイン中央部地方、例えば100㎞~200㎞圏内を訪ねてみると、

今でも街道沿いの丘や山間部にはイスラーム起源の要塞が点々と残っています。

監視塔へ続く道 12889

監視塔へ続く道 12889

かつてのマドリードの監視塔もこれらと同様、防衛システムの1つとして周囲と連携していた訳なのです。

中世の村 SORIA 13587

中世の村の入り口 ソリア県 13587

16世紀後半、首都として機能し始めたマドリードは、ヨーロッパの名門オーストリアのハプスブルグ王朝、その後には、特にフランスのブルボン王朝の華やかな都として発展してきました。

噴水  14507

カモの噴水(18世紀)  14507

しかしそれだけに留まらず、今ではその影の部分となったレコンキスタ時代のマドリードを、

現存する地方の古城や塔の景色と合わせながら、その時代の世界も想像出来れば、歴史を知る、また旅をする楽しさがもっと広がるのではないでしょうか。

マクロ・レンズの目で見るマドリード

お話ししましたように、マドリードから地方へ出かけて古城や要塞を訪ねる旅も面白そうですが、

マドリードにも僅かではありますが、イスラーム時代の城壁が王宮近くの公園に残っています。

プラド美術館  935

Museo del Prado (プラド美術館)  935

城壁は古学的価値は高いとは言え、その規模も小さく、人気のあるプラド美術館や王宮見学に比べると訪れる旅人もまばらですが、

王宮 (オリエンテ広場側から) 14191

Palacio Real de Madrid (王宮): オリエンテ広場からの眺め 14191

まずは、まだまだマドリードのご紹介仕切れていない町並みや人々を「マクロ・レンズの目」で見てみませんか。

是非色々なマドリードを知って頂きたいと思います♪

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休憩時間は「梅林」で

さて、第一部が終了致しました。ご覧頂きましてありがとうございました。

8289

梅林 8289

さて、このまま続けてご覧になる方、或いは第二部を時間を置いてご覧になる方、両方いらっしゃるかと思います。

紅梅 8346

紅梅 8346

ここで一旦「休憩時間」のご案内をさせて頂きます。どうぞこちらで、 気分転換をなさって下さいね。

尚、恐れ入りますがいつものように 休憩時間の長さに関しましてはご自分で設定して頂きますようお願い致します♪

白梅 8320

白梅 8320

それでは第二部をごゆっくりどうぞ。

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町の中心「シベーレス広場」

こちらはマドリードの「中心の中心」と呼ばれる「シベーレス広場」です。

シベーレス広場 14307

Plaza de Cibeles (シベーレス広場) 14307

この広場の周囲を美しく飾っている建造物は3つの宮殿と、それにスペイン銀行です。同じ広場に「3つも宮殿があるなんて!」と驚くかもしれませんね。

シベーレス広場 4627

シベーレス広場 4627

特に右に見える「シベーレス宮殿」は、広場の中でも代表的存在です。

この建物には後ほど中に入る事にして最初は広場をくるっと一巡りしてみませんか。

シベーレスの噴水

ロータリー中央部の噴水を忘れるところでした!

こちらをまずご注目下さいね。

"Fuente de Cibeles" 「シベーレスの噴水」 15086

Fuente de Cibeles (シベーレスの噴水) 15086

二頭の獅子に引かれた馬車に乗るのは、豊穣と多産の女神「キュベレ-」。キュベレーは、スペイン語でシベーレスです。

日没後、この美しい「シベーレスの噴水」は、イルミネーションが点灯すると、周囲の歴史的建造物と共にマドリードらしい華やかな夜景を演出します。

マドリードの環状線M-30 14685

マドリードの環状線「M-30」 14685

特にこの広場を見て感動したのは、長旅をした帰り道でしょうか。

この噴水前まで来ますと、『ああ、マドリードに戻ってきたんだわ』と、実感が湧く場所でもあります。

シベーレスの噴水とアルカラ門 15477

シベーレスの噴水とアルカラ門 15477

噴水が出来た18世紀後半以来、今も昔も変わらずマドリードの人々から愛され続けている証としては、レアル・マドリードの祝賀場所として挙げられます。

サポーターが選手達への栄誉を讃える為に広場を埋め尽くし、歓声の中ヒーロー達が、特別に女神の座像まで立ち入る姿が見られますし、

また1930年代に起きたスペイン市民戦争の最中、

レンガ塀(イメージ)  15486

レンガ塀(イメージ)  15486

共和国側が町を支配していた際には、人々の噴水に対する愛情によって噴水に土嚢を山と積み上げ、更に煉瓦でピラミッド形で保護されたのでした。

宮殿と名のつく2番目の館

さて、こちらは侯爵の家として1900年に完成した豪華な「リナーレス宮殿」です。

シベーレス広場 (パセオ・レコレートス側) 写真左手がリナーレス宮殿 14246

シベーレス広場 (右から左へ シベーレス宮殿、リナーレス宮殿 )14246

1992年以降、現在に至るまで「カサ・デ・アメリカ」として、

スペインとラテン・アメリカ諸国(スペイン語圏)との経済交流の為の財団が置かれています。また一時、別の意味でも有名になった宮殿です。

リナーレス宮殿 15026

Palacio de Linares (リナーレス宮殿 1900年) 15026

事の発端は、1990年代初頭だったでしょうか。ある女性心理学者の「宮殿内でミステリアスな現象が起こる」といった発言が急浮上し、マスコミが調査に入るなど巷でもこの噂で持ちきりでした。

これには宮殿の主人、初代リナーレス伯爵ご夫妻に纏わる悲しい伝説が関連しており、昨年11月にも地元新聞『ABC』に再度この怪奇現象の記事が取り上げられましたので『またこのお話...?』と、思ったものです。何故、何度もこの話が再浮上するのでしょうね。

3つ目の宮殿

スペイン銀行の向かい側、木立の奥に見える煉瓦色の広大な建物は現在では陸軍司令部となっていますが、

元々は18世紀後半にアルバ公の館として建てられた「ブエナビスタ宮殿」でした。

14322

Palacio de Buenavista (ブエナビスタ宮殿) 14322

アルバ公、そして絵画と来れば第十三代アルバ女公爵が話題に上がりますが、アルバ女公爵カジェタナに関してはスペインの宮廷画家フランシスコ・デ・ゴヤが、肖像画を描いているのでご存じの方もいらっしゃると思います。

でもその肖像画よりはむしろ『着衣のマハ』や『裸のマハ』のモデルが「ひょっとしてアルバ女公爵なのでは?」とどうしても関心がいってしまいそうです。

そして、スペイン銀行

シベーレス広場の1角に構えているのが19世紀末にベネチアン・ルネサンス宮殿様式で建築された「スペイン銀行」です。

"Banco de España" 「スペイン銀行」(1891年) 15083

Banco de España (スペイン銀行 1891年) 15083

このスペイン銀行を眺めながら小話をと考えておりましたが、また次の機会にしてこれからシベーレス宮殿へ行ってみませんか。

「シベーレス宮殿」

これからこの広場で一番お世話になった「シベーレス宮殿」へご案内致しましょう。宮殿でお世話になったとはおかしな表現ですが、その説明も追ってお話ししていきます。

シベーレス宮殿 15081

シベーレス宮殿 15081

シベーレス宮殿は現在、マドリード市庁舎になっていますが、旧市街のビジャ広場を覚えていらっしゃいますか?

「ああ、薔薇色をした建物や、海軍提督の像のあった場所?」

そうなのです。あの広場からこちらへ移転してきたのです。では市庁舎が入る以前は何があったのでしょうか。実は...郵便や電信を扱う「中央郵便局」でした。

スペインの郵便ポスト 9471

スペインの郵便ポスト 9471

えっ、驚かれましたか?私も最初はそうでした。

シベーレス宮殿が建設されたのは1919年のことでしたが、その後、市民戦争をくぐり抜けたこの建物は、2006年末以降、数十ヶ月間改装・改修工事が施され見事に生まれ変わりました。

シベーレス宮殿 中央部 14260

シベーレス宮殿 中央部 14260

マドリード市役所によると、工事に関しては建物の損傷も予想以上で、また歴史遺産の制約もあったことから苦労が多かったようです。

尚、現在建物は市庁舎の機能の他、中央の高い塔のある建物は一般公開されるようになりました。

またこの建造物は宮殿(英語ではパレス)と呼ばれていますが、スペインでは公共建造物を表す際、例えば国会議事堂や、首相官邸にも「宮殿」が使用されます。

通信局であった頃の思い出

現在新しく美装されたこの宮殿を眺めながら、過去の記憶、それもまだ郵便局であった頃のお話をこれからしようと思います。

"Círclo de Bellas Artes" (芸術センター)のカフェテリア  9344

Círculo de Bellas Artes (芸術センターのカフェテリア)  9344

スペインへ到着したばかりの頃は、新しい経験ばかりで今でも記憶が鮮明に残っています。

中央郵便局へ初めて行ったあの日は、近場のカフェテラスで書き上げた絵葉書を、日本へすぐに送りたくなり、数枚を手に喜び勇んで郵便局へ出かけて行ったのでしたが...。

シベーレス宮殿  正面 15474

シベーレス宮殿  正面 15474

郵便局を訪ねた時の気持ちは少し大げさな例えですが、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の主人公、マリアのようでした。

映画では見習い修道女から新しく家庭教師となった彼女が、家庭教師先であるトラップ大佐の豪華な屋敷を前に一瞬、門前で足がすくんでしまうシーンがありましたね。今、あの頃の自分を思い出すとちょうどマリアと同じ。当時は結構どぎまぎして郵便局の立派な入り口の階段を上っていったようです。

シベーレス宮殿入り口のファザード  15252

シベーレス宮殿入り口のファザード  15252

そしてこの私もマリアのように、豪華な装飾のファサードを前にしてため息を漏らしてしまいました。

正に言葉通り、「内部に郵便局の機能が備わった宮殿建築」と言う表現がぴったりだったからです。

シベーレス宮殿 玄関 階段 14369

シベーレス宮殿 玄関 階段 14369

更に記憶を辿っていきますと当時は入り口から階段を上り、

シベーレス宮殿 内部 14261

シベーレス宮殿 内部 14261

そこから目は、階段から各階のぐるりと囲まれた広い回廊を下から上へと順に移って

シベーレス宮殿 入り口 フロア 14262

シベーレス宮殿 入り口 フロア 14262

そして最後の視線は自分が立っている真上に到達。

14263

シベーレス宮殿 中央 吹き抜け 14263

吹き抜けの高い天井をしばしの間眺め、口から漏れたのは、大きな感動と共に周囲の人々に聞こえぬような小さな声。『わぁ...』。

まだ4,5才の頃だったでしょうか。初めて東京駅のドームを見上げた時と同じ感動でした。

14265

シベーレス宮殿 中央 天窓 14265

我に返って未だ興奮気味に出た次の言葉は、

「さぁて...と、切手売り場は何・処かしら?」

郵便書類 記入台 14280

郵便書類 記入台 14280

大理石で出来た各窓口を覗く度、合いの手を入れるように何度か『ここは本当に郵便局?そうようね』と、思ったものです。

14296

郵便局時代の窓口 14296

そして...。郵便局の外へ出てやっと高揚した気分が収まったのか、無事絵葉書を送り出した満足感と共に、

シベーレス宮殿 出入り口 14067

シベーレス宮殿 出入り口 14067

まさか郵便局自体が、『美術館やオペラハウスと同じ満足感を心に与えてくれるなんて!』と、驚いたのを覚えています。

シベーレス宮殿 内部 14272

シベーレス宮殿 内部 14272

今、あの時のことを思い返してみますと自分自身でも微笑ましかったり、ちょっと可笑しかったりする経験でした。

まだまだお話はつきませんが、そろそろ塔へ上ってみませんか?マドリードの町並みが展望できますよ...♪

シベーレス宮殿の塔に登る

シベーレス宮殿 天窓 14286

シベーレス宮殿 天窓 14286

宮殿内の装飾する色は主に白、サーモン、そして緑色。あとは自然光が時間によってその都度アクセントをつけてくれます。

シベーレス宮殿 内部 14294

シベーレス宮殿 内部 14294

辺りを見回して見ましょう...。

シベーレス宮殿 内部 14274

シベーレス宮殿 内部 14274

それと、建築様式にも注目です。

シベーレス宮殿 内部 14298

シベーレス宮殿 内部 14298

ここから見ますと支柱との間を、ボルトで打たれたむき出しの鉄骨が通っていますが、

シベーレス宮殿 内部 14284

シベーレス宮殿 内部 14284

本来の宮殿の持つエレガントな雰囲気は損なわれていません。とても美しいですね。

四方を鉄骨で組まれた廊下を歩いていく人達がいますが、あそこを歩いて塔へ上っていくようですよ。

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シベーレス宮殿 塔の上部 14354

上部へ大分上がってきました。

辺りを見回すと知らぬ間に、まるで何処かの現代美術館にいる錯覚に陥りませんか。階下の混合した建築様式からの切り替えは見事です。

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シベーレス宮殿 塔の上部 14352

もう一息で展望台...。日差しが心地良いですね。

シベーレス宮殿 展望台 14349

シベーレス宮殿 展望台 14349

さぁ、到着です。外に出ました。

展望台からのマドリードの眺めは旅人のみならず、マドリードの住人にとってもいつもと違った目線で眺められるので新鮮です。

シベーレス宮殿からの眺め 14348

シベーレス宮殿からの眺め 14348

普段道を歩く際の目線は大方決まっていますから、最上階のペントハウスやバルコニーの装飾、可愛らしい屋根裏部屋、また展望台の趣向を凝らした像など地上から見えない新たなマドリードの顔を発見できそうです。

パセオ・レコレートスを望む  "Paseo de los Recoletos" 14318

Paseo de los Recoletos パセオ・デ・ロス・レコレトス通りを望む 14318

広場から北に延びる「レコレトス通り」は並木道になっています。

大分北になりますが、国の行政機関や大企業が並び、またレアル・マドリードのスタジアムもこの大通り沿いにあります。次回にはこの道を途中まで歩いてみましょうか?

プラド通りを望む 14321

プラド通りを望む 14321

今度は、ご覧になった逆方向をご覧下さい。南に延びる「プラド通り」は鬱蒼と木が茂りよく見えませんね。

こちらの通りもとても気品溢れる並木道なので「パレス・ホテル」迄、歩いて行きたいと思います。パレス・ホテルは見つけられましたか。あの並木道の奥、白い外壁に黒屋根の大きな建物です。

通りには、プラド美術館を始め、王立植物園、近くにはマドリード証券取引所もあり、道の終わりには高速鉄道”AVE”(アベ)が発着する「アトーチャ」駅が目の前に大きく姿を現します。

シベーレス宮殿 BAR 14325

シベーレス宮殿 BAR 14325

ん?塔の少し下をご覧下さい。屋根の一部を上手に利用したお洒落なBarが見えます。あのBarからも町の眺めが良いのでしょうね。また屋内にはレストランもあるようですよ...。

それでは最後に、広場からの眺めが一番美しい、「アルカラ通り」を見てみましょう。

左手に見えるスペイン銀行の他、大小多くの装飾的な建物は19世紀末から20世紀初頭にかけて建築されました。今、ここから1つ1つ指を指してご説明出来ないのがちょっと残念です。

スペイン銀行(左)とアルカラ通りの眺め 14301

スペイン銀行(左)とアルカラ通りの眺め 14301

それから少しの間、この眺めを見ながら城壁までのルートを考えていたのですが、本来ならばこの通りを真っ直ぐ向かうのですが、それでは単調で面白くありませんからジグザグに、或いは星形を描くようなルートを考えています。

また中心街での移動は、乗り物でほんの数駅の距離ならば歩いた方が乗り換えの手間も省けますし、より楽しいですものね。

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シベーレス宮殿内部 14360

「見学時間の15分間が終了です」と、係の方からお声がかかりましたので、下へ降りていきましょう...。

おや?歩いている向こう側に見えているのは絵タイルと階段のある風景。午後の光りの遊戯、でしょうか。

窓から差し込む光によって浮かび上がる東洋的文様の絵タイルが美しさ...。

シベーレス宮殿前

シベーレス宮殿の外に出ました。

休息をとる女性  15259

外階段で休息をとる女性  15259

もう一度宮殿のファサードを見上げてから横に首を振ると、外階段で観光客と思しき女性が目に入ります。

階段には木の葉がちょうど上手い具合に影を造り、休憩には快適な場所のようです。あちこち頑張って歩いちゃったのかしら?

シベーレス広場  14410

シベーレス広場  14410

また、シベーレス宮殿前では記念撮影をしている新郎新婦を見つけました。

マドリードにはフォトジェニックな場所が沢山ありますから、こうして何カ所か廻るはずです。

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広場を歩く新郎新婦 14413

そう言えば、よく街中のクリーニング店で、挙式後に洗いに出されたウエディングドレスが綺麗に吊されているのをよく見かけました。

こうして撮影の為に外を歩き、またバンケットではダンスを踊り、ドレスの裾も随分と泥や草の汁で汚れてしまいます。ですが自前のドレスなら、それも、嬉しい思い出になりますよね...♪

どうぞ末永くお幸せに!

現在の郵便局

シベーレス宮殿は如何でしたか。ところで、マドリード市庁舎になる前は郵便局として機能していた事はお話しましたが、郵便局は何処へ行ったのでしょう。

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プラド通りのプレート 14421

大丈夫です。ちゃんとシベーレス宮殿の右手、プラド通りが始まる場所にあります。

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中央郵便局とタクシー乗り場 14477

本当に豪華な郵便局...。

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中央郵便局 外部の豪華な装飾 14455

奥の外壁には黄金色に輝くプレートが並び、

窓ガラスには郵便局のロゴ王冠にポスト・ホルン♪・♪♪~。

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中央郵便局 : 郵便ポストと郵便局のロゴ「王冠とポスト・ホルン」(ガラス窓) 14452

マドリードの本局らしくマドリードの他、その他の大都市、速達や印刷物用に分かれた立派な郵便ポスト。ポストは以前から変わっていません。

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中央郵便局のポスト 14434

本日ラストの写真

シベーレス宮殿。ゆっくり見て回りましたが、気に入って頂けましたでしょうか。ご紹介している中にあっという間に時間が過ぎ日没の時刻を迎えました。

ラストは、絵画を思わせるような2つの美しい景色をご覧下さい。最初は広場から眺めが一番美しい通り、アルカラ通りの夕暮れです。

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夕暮れ時のアルカラ通り 15513

そしてここから振り返ってみますと、

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シベーレス宮殿と花色に染まる空 15504

つい先程まで滞在していたあの宮殿の背後にも花色を思わせる美しい夕焼けが空を染めています。

家路へ向かう車の群れ、そのライトが複雑に交差する中、広場の噴水が華やかにライト・アップされるのももうすぐです...。

それでは今回のマドリードのお話はこの辺で。

マドリードをマクロ・レンズで眺めたシベーレス広場はお楽しみ頂けましたでしょうか。次回はシベーレス広場を基点に北へ南へとご案内する予定です。

またしばらくぶりのブログ更新でしたので、その間の季節の風景作品もお楽しみ頂きたくて、Upする事に致しました。それから、大変お待たせしてしまいました。

ところで、春爛漫の頃は自然の色彩の美しさをとても感じますが、今の季節は、春の到来を待つ植物を見る度に、私達に希望や力を与えてくれそれはそれで素敵な季節だと思っています。

ではまた近いうちに当ブログでお目にかかれる事を楽しみにしています。最後までご覧頂きましてありがとうございました♪

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